早稲田演劇博物館オンライン企画ご視聴有難うございました

3/7月曜日
早稲田大学演劇博物館のオンライン企画
「映画宣伝資料を活用した無声映画興行に関する基礎研究」主催公開研究会
映画宣伝資料にみる無声映画興行の諸相
のzoomでの一般公開がありました。
私も見させて頂きました。

映画と浪曲による「五郎正宗孝子伝」
研究発表
の二部構成でした。

小野記念講堂で昨年末に
関係者の方にも観て頂いて収録がありました。
「五郎正宗 親子対面」の場を
まず、浪曲で
東家一太郎 曲師 東家美でさせて頂きました。

その後、
映画『五郎正宗孝子伝』(天活、1915年、国立映画アーカイブ所蔵)(約70分)
監督 吉野二郎 出演:澤村四郎五郎ほか

活動弁士片岡一郎先生の映画説明と
湯浅ジョウイチさん指揮、
楽団の皆様の音楽。
楽団入りの生の無声映画上映の中に
浪曲で入らせて頂くのは初めて。
無声映画好きの私、大感動でした。

今回の企画は
映画の公開時に
浪曲入りで公演した記録が残っていて
それを再現しようという試みです。

浪曲は2シーンありまして
五郎が父行光に自分の素性を語り、親子と発覚するシーン
五郎が雪の中を井戸の水を汲んで八幡様に願掛けし、
継母お秋の病いが治るように祈る。起きてきた定吉がそれを見かねて助けるシーン
の二つです。

本来は2つ目のシーンは義太夫でやっていたようですが
今回はそのシーンも浪曲でやりました。

どうやらフィルムのコマ数が公開当時とは違うそうで、
映画説明も少し早口でやらないと説明台本に合わないとのこと。
浪曲も1つ目のシーンは
節がなかなか入れられない、三味線の音も長く聴かせられないので、少し早めの啖呵で務めました。
逆に2つ目のシーンは、
義太夫のゆっくりな語りに合わせているので、
浪曲もゆっくりやってちょうどよいか、少し余るくらいで、こちらはとても務め甲斐があり、勉強になりました。
五郎が雪中願掛けする、引きの映像がずっと流れていて
芝居の舞台中継のようで、表情のアップとかはないのですが、
五郎の動きにポイントを見つけて
台本を合わせていきます。
アニメのアフレコですね。

役者さんの芝居に合わせて浪曲をする節劇、喜劇を
毎年公演しているのですが、それとは違った難しさと楽しさがありました。

映画の中の五郎に合わせながら
三味線とも呼吸を合わせて浪曲をやるのはとても難しかったです。
映像に合わせて台本を修正しましたので、言葉が足りないということは基本無く
少し足りないと思った時は、節を長めにしたり、セリフをゆっくり情感をさらに込めました。
逆に、言葉が余ってしまい動きと少し合わなくなったら、その場で節やタンカの言葉をカットしました。

浪曲は
浪曲師と曲師、お客様
と三位一体となってやる芸ですが
そこに映像が加わってくるのですから
本当にきちんとやるとなったらさらに難しいです。

また、映画上映は
客席は暗くしないと、お客様が映画を観れないのだと思いますが、それではお客様の表情が分からない。
浪曲はお客様の顔が見れないと本領は発揮できません。
お客様の表情や反応がわかればさらにアドリブなどで面白くなるのかなと思いました。

とにかく今回思いましたのは
活動弁士の先生は凄い!
ということです。
浪曲とはまた違った、
片岡一郎先生の素敵な語り
本当に勉強になりました。

研究発表
先生方のお話もとても興味深いものばかり。
・キネマ文字
・関東大震災前後の映画興行界
・映画に実演で入る邦楽
・ドイツ無声映画の国外における上映と伴奏
わくわくしながら聴かせて頂きました。

映画の中に浪曲で説明が入ったという資料自体があまりないそうでして、
今回の「五郎正宗」は映画自体も、浪曲が入って公演していたということも貴重なのだそうです。
「五郎正宗孝子伝」
は名人上手といわれた浪曲師の錚々たる人たちがこぞって演っている演目ですので(この事実も調べていて驚きました)
五郎正宗といえば浪曲
で聴きたいと当時のお客様に思われていた、
また、浪曲浪花節自体が人気絶頂へと昇って行く大正昭和の時代です。
何しろ全盛期に浪曲師は全国で3000人いたと言わています。
色んなことに挑戦する、お仕事の依頼を受けた浪曲師が沢山いたことと思います。

名人上手といわれる浪曲史を築いた人たちはごく一部で
芸は巧くても歴史に残っていない浪曲師、曲師たち
その時代時代に色んな浪曲家がいらしたと思いますが
皆様、敬愛すべき、親しみのある浪曲界の先人たちです。
そういうことまで感じさせて頂きまして、
早稲田大学演劇博物館 企画のご縁を頂きまして本当に感謝申し上げております。

演ってきた当人たちは
まさか大衆芸能の浪曲浪花節が
学術の対象になると
思っていなかった筈です!

貴重な日本の文化ですから
学問の対象になって当然、
これから益々そうなると思います。

肩肘張らない
気楽に、お客様に楽しんで頂く、
魂熱くパワフルで、
節と三味線で巧みにこの世の中の素晴らしさを現す芸が浪曲浪花節。
学ばせて頂いた事を腹の中に押し込んで
精進して参ります‼️