NHKFMラジオ 浪曲十八番
東家一太郎 曲師 東家美
「一太郎の浅草案内 木馬亭五十年の軌跡~谷風長屋の土俵入り」は
NHKのネットラジオ「らじるらじる」の聴き逃しサービスで
5月14日(木) 午前11:50配信終了まで
パソコンやスマホでも放送を無料でお聴き頂けます‼️
まだ聴いてないよという方はこちらから是非宜しくお願いします(^O^)
今回の放送は木馬亭五十周年ゆかりの
大師匠東家楽浦のご紹介も含めて
一太郎がご案内させて頂く形にさせて頂きました。
二席目の「谷風長屋の土俵入り」は
楽浦師匠脚色の浪曲です。
師匠浦太郎のお宅の引っ越しの時に、見つけましたオープンリールのテープ。
師匠に「頂いてもいいですか」と云ったら、
「いいよ」ということで、使い慣れないオープンリールデッキでやっとこさ、テープの中身を聴きました。
楽浦師匠がどこかで口演された、おそらく他にはないとても貴重な音源です。
横綱谷風梶之助と力士佐野山権平の情け相撲の話は有名ですが、
横綱が長屋で土俵入りするという珍しい話でした。
土俵入りで貧乏神、疫病神の厄払いをするというおめでたい内容で、時間も短めの浪曲なのでお正月などにちょうど良い演目だなと思っておりました。
病気の両親の看病の為に、負けこんで幕内から十両のどん尻へと落ち込んでしまった佐野山。
弟子の花ノ島は台所を受け持って師匠を助けていますが、借金でどうにも行かなくなり、横綱谷風にお金を無尽に行きます。
谷風は親孝行の佐野山と師匠想いの花ノ島の心に打たれ、大金を持って佐野山の貧乏長屋を訪ねに行きます。
狭い狭い長屋に体の大きな力士が集まって、
天下の横綱が土俵入りをするという所が
想像すればする程、昔のマルクス兄弟の船の客室にすし詰めになるコントのような滑稽さがあります。
佐野山のセリフはほとんどないのですが、
佐野山を助けて、元の強い力士に戻って欲しいと願う花ノ島と谷風とその弟子たちの会話で、義理人情の熱い想いを描いているところは
楽浦師匠の脚色のとても巧くて、浪花節の真髄の部分です。
大金五十両を佐野山の病気の両親の為に差し出した横綱谷風に対して
〽️
台所では花ノ島
ええ お有難う存じます
横綱関よと たまりかね
はらはら落つる 涙の露を
そっと拭き取る 濡れ雑巾
という節の文句にはいつも涙が出てきます。
脇役の花ノ島を照らし出し、
啖呵で笑って泣かせて
節で泣かせて笑わせる
この感覚にハマったら浪曲の魅力から抜け出せません。
何故だかわかりませんが、声を詰まらせてむせび泣く、嗚咽します。
人間がいかに素晴らしいかを想うからでしょうか。
楽浦師匠の音源は
節が少なめで啖呵が多いので、
師匠浦太郎だったら節を多めに変えるだろう、師匠の現代的な浪曲の形に近づけようと、
美と相談し、一緒に稽古しながら、節で盛り上げて行くように変えて参りました。
まだまだ工夫や研究が必要ですが、ラジオで放送して頂くことができまして、本当に有り難いです。
新型コロナウィルスの疫病神を追い払い、
ラジオお聴きの皆様に少しでも元気に明るくなって頂きたいという気持ちを込めて務めさせて頂きました。
収録時は思いもよりませんでしたが
コロナ禍での給付金や補助金のことも、谷風の佐野山へのお見舞い金と絡めて、いかに心が大事かと気付かせて頂きました。
相撲が国技の日本に於いて、横綱の土俵入りを皆が固唾を飲んで見つめる理由も何となくわかる気がしました。
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