新年明けましておめでとうございます。
今年は元旦零時十分から、浅草木馬亭の舞台で
美の三味線に乗せて一太郎、浪曲を唸らせて頂きました。
最愛の木馬亭の舞台で年明け早々に浪曲を務めさせて頂ける、浪曲師として最高の幕開けとなりましたが、胸を張って良かったと言える舞台の出来ではありませんでした。
私の芸の未熟さゆえです。
浪曲は本当に素晴らしい芸能です。今年で芸歴十三年になりますが、年々その想いは強くなっています。
よく「浪曲はいわば日本のミュージカル」という表現をさせて頂いております。
往年のミュージカル映画が微塵の恥ずかしさもなくストレートに胸に秘めたる愛を歌で訴えるように
浪曲は恥じも外聞もなく、人生の喜怒哀楽を、浪曲師の声で節で語りで、そして三味線の音色と曲師の気合いで
私たちの心に、えぐるように飛び込んで来ます。
浪曲はカッコつけない、ありのままの、素朴で温かい芸です。私たちの郷愁を誘う芸でもあります。
自然や人間本来の素直な心に寄り添った芸だと思います。
それ故に、浪曲の物語を体験した感動は時に、胸を震わせるような嗚咽する程の涙を誘います。
一生かかってこの浪曲という芸を私は続けて行くと決めています。
八十歳九十歳になったらさぞやいい芸ができるかも知れませんが、そうとも限らないとも思っています。
浪曲で生の感動をお届けしたい!
という一緒の夢に、妻の美に付き合ってもらい、三味線を弾くだけでなくいつも支えてもらっています。
お客様にはいつも応援して頂き、励まして頂き、なぜここまでして頂けるのかといつも有難い感謝の気持ち、感動で一杯です。
浪曲師と曲師とお客様の三位一体となったバランスで出来上がる芸が浪曲です。
今が最高の芸ができるようにしなくてはいけません。本当に一期一会で、お客様と同じ空間時間で聴いて頂けるのも、もしかしたら今だけかも知れません。
一回の出会いで一生感動が続く芸でもあると思います。
いつも今この出会いを大切に、毎回の舞台に出来得る限りの準備をして参ります。
未熟な芸人ですが今年は自分を変えて、がむしゃらに動いて参ります。
2020年最後の舞台の後に
お客様に「一太郎この一年で成長したな」と仰って頂けるように努力致します。
本年も何卒宜しくお願い申し上げます。
令和二年元旦
浪曲師 東家一太郎
曲師 東家美
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